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長崎地方裁判所 昭和36年(ワ)402号 判決 1964年6月30日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は「被告らは各自原告に対し金二三万七、五五八円およびこれに対する本訴状送達の翌日より完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求原因として、「一、原告は昭和三五年七月二三日被告晧子より、被告国弘保証のもとに、数量を指示して別紙目録記載の土地家屋を土地は金一二五万円、家屋は金二〇万円と評価して、合計金一四五万円で買受け、同日金三〇万円同年八月二日金一一五万円を支払い同月三日右所有権移転登記手続を了した。二、右売買については、被告らは右土地を実測して引渡す約定であつたので同年九月二五日原被告立会のうえ訴外椎山工務店に右土地を実測させたところ、原告が数量を指示して買受けた前記土地のうち長崎市中新町四三番地の一の宅地の坪数は八六坪五合であつたのに、引渡を受けた右宅地の坪数は実測の結果、六八坪六合八勺であつて差引一七坪八合二勺の不足であることが判明した。それゆえ右不足坪数に相当する代金である、右土地一坪当りの価額金一万三、三三一円に右不足坪数を乗じた金二三万七、五五八円は本件売買代金から減額さるべきである。三、よつて原告は被告らに対し各自金二三万七、五五八円およびこれに対する本訴状送達の翌日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴に及ぶ。」と述べた。

被告ら訴訟代理人は主文同旨の判決を求め答弁として「請求原因第一項中、被告晧子が昭和三五年七月二三日原告に対し、別紙目録記載の土地および家屋を代金一四五万円で売渡し、同年八月三日所有権移転登記手続を経由したことは認めるが、右物件を数量を指示して売渡したこと、および右物件の価額は、土地は金一二五万円、家屋は金二〇万円と定めたことは否認する。被告晧子は一般の慣例に従い右土地家屋を一括してその売価を金一四五万円と定め、これを、原告に売渡したものである。請求原因第二項中被告らが本件土地を実測して引渡す約定があつたことは否認する。その余の事実は知らない。被告らは右土地の測量に立会つたこともない。」と述べた。

立証(省略)

理由

被告晧子が昭和三五年七月二三日原告に対し別紙目録記載の土地家屋を代金一四五万円で売渡し、同年八月三日右所有権移転登記を経由したことは当事者間に争いがなく、原告が右代金を被告晧子に支払つたことは被告らにおいて明らかに争つていないからこれを自白したものと認むべきである。

次に証人椎山俊美の証言によつてその成立が認められる甲第五号証、成立に争いない甲第六、第七号証、並びに証人椎山俊美の証言および原告本人尋問の結果によれば原告が買受けた別紙目録記載の物件中、長崎市中新町四三番地の一宅地八六坪五合(ただし、当時の登記簿上の表示)は実測の結果六八坪六合八勺しかなく、差引一七坪八合二勺不足することが認められ他にこれを左右するに足りる証拠はない。ところで原告は本件不動産の売買においては、その土地の坪数を指示し、かつ土地の売買価額は金一二五万円、家屋のそれは金二〇万円と定めた旨主張するのであるが、原告本人尋問の結果以外にはこれを認めるにたりる証拠はなく、この点に関する原告本人尋問の結果は被告草野国弘の本人尋問の結果と対照しにわかに措信し難い。もつとも前記甲第六号証には、被告らは原告に対し、本件係争物件たる前記土地につき何等きずのない完全なものを責任をもつて引渡すことを保証する旨の記載があるが、右と甲第七、第八号証および、被告国弘本人尋問の結果を綜合して判断すれば、本件売買は単に別紙目録記載の不動産を所有権自体に瑕疵なく、且つ抵当権や賃借権の存在しないことを保証して売買したのであり、土地について坪数を表示したのは特にその坪数を指示し保証したものではなく、右土地を土地登記簿の記載当時は八六坪五合と記載されていた)に符合させてこれを特定したものにすぎないと認めるを相当とし、右認定をくつがえすに足る証拠はない。されば、本件売買は坪数を指示してなされた売買とは認められないからたとえ実測坪数に多少の不足があつてもこれを理由として売買代金減額を請求しうるものではないといわなければならない。

以上の次第で原告の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく全部理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

別紙

目録

長崎市中新町四三番の一

一、宅地 八六坪五勺

同上四三番の二

一、宅地 七坪四合

同町四三番一

家屋番号同町第六七番

一、木造瓦葺平家建居宅一棟

建坪 二五坪

一、塀、井戸、畳建具其他付属定着物、従物等一切有姿のまま。

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